悪魔のことを記した物語が置いてあるところ。
書庫にあるすべての話は、空想でしかない。
悪魔がどんな日々を過ごしたのか、気になるものだ。
僕が見える君に会いに来た
「君に会いに来た」
私は本を読む君の頭上から、姿を現した。
「誰…?」
君は、無表情に驚いていた。
「私は悪魔だ。君に力を与えに来た」
目を見つめながら、私の使命を話した。
「僕に力を?」
冷静に、私の言葉を聞いていた。
「そう、私と目が合った綺麗な君に悪魔の力を」
私は、君の頬を撫でた。
「醜いと言われている僕が綺麗?」
低いトーンで話す君の声は震えていた。
「綺麗だよ。僕の目に狂いは無い」
いろんな人を見て飛び回った私の目に自信があった。
「そ、そうなのか…僕には分からないが…」
君は言葉に圧倒されただけだった。
なぜ飲まない、分け与えるというのに
「私の血が飲めないというの?」
血の入ったワイングラスを揺らす。
「飲めない」
人間が言う。
「飲んだら楽しい生活を送れるというのに?」
私は、グラスを人間の目の前に持っていった。
「血はいらない」
人間にずっと拒絶される。
「じゃあ、お前は何が欲しいというのだ」
私は困っていた。
「あなただけが欲しい」
人間が目を見て私に言ってきた。
「何を言っている…」
私は言葉を疑った。
人間でなくなる前に俺が魔界に連れていく
「俺と一緒に魔界へ」
俺は人間を翼で覆い、耳元で口説いた。
「僕は、死ぬの…?」
震えながら人間は俺の腕を掴んでいた。
「お前は人間としては死ぬ」
声を低くし、正直なことを言った。
「死ぬんだ…」
人間はあっさりと自身の状況を受け入れていた。
「うむ。人間から悪魔として生まれ変わり魔界で暮らすのだ」
俺は人間の未来を告げた。
「魔界は苦しいところ?」
魔界のことについて聞かれた。
「今よりは苦しくない、お前を守れるところだ」
俺は魔界について人間に話した。
「よかった。君を信じるよ」
安心したようで良かった。
契約課題を忘れた俺の前に小悪魔の少女がいるんだけど
「お嬢さん、こんな真夜中に家出かい?」
座り込んでいる少女を見つけ声をかけた。
「誰、あなた…」
元気無さそうに淡白に話す。
「俺は人間。雷一文字でライという名がある」
俺は誇らしげに名前を教えた。
「人間、雷、わかった」
少女に軽く流された感じだった
「それで羽の生えたお嬢さん、どうしてここに居るの?」
辺りは暗かったが、チラッと羽が少女の隙間から見えた。
「お嬢さんじゃなく私は小悪魔の紅なの」
少女は正体と名前を教えてくれたが、質問は聞き流されてしまった。
「くれない、変わっているな」
俺は名前を空に文字を書いただけだったから、読み方に迷った。
「くれないではない、あかだ!あか…」
紅は二択の選択を間違えた俺を、慌てて『くれない』から訂正された。
俺の人間がキスを拒むんだが
「こんにちは、ネビス」
俺はネビスに顔を近づけ、唇を狙う。
「こん…っ!?今はだめ」
ネビスは俺の口を手で塞ぎ顔を逸らした。
「なんで、手やるの?」
塞ぐネビスの手を舌で舐めつつ、聞いた。
「…っん。は、恥ずかしいじゃないか」
ネビスは吐息が漏れつつも、冷静な態度を保っていた。
「ネビス、耳赤くなってるよ?」
俺はネビスを見ながら塞ぐ手を外し、手を握った。
「な、何をしているんだ!ミジェ」
手をブンブンと振って握った手を解放しようとしていた。
「無駄だよネビス。この手は外れない」
力入るネビスの手を、更にぎゅっと握った。
「ミジェ、痛い…離して…」
ネビスは涙目で俺を見つめて懇願していた。
「ネビス!ごめん。泣かないで、可愛いな!」
俺は感情が複雑になりながらさっと手を離し、ネビスの顔へ手を伸ばした。
「もう、ばかミジェ!」
ネビスは俺の手を払い涙を拭った。
好奇心に負けた俺は愛人のユクを縛った
「ヴァントなぜ僕は柱に縛られているのかな?」
ユクは緊張して俺に話しかけた。
「安心しろ酷いことは何もしない」
俺はユクの背後に立って話す。
「そしたら後ろじゃなくて前に来て欲しいのだが」
縛られている紐が取れないか手首を捻っていた。
「良いな、ユクを後ろから見るのも。眼福だ」
背後から熱い視線を送りながら、背中にスーッと指を伝わせた。
「…っん、ダメだヴァント。やめて、くすぐったい」
ユクは抵抗する様にもじもじとしていた。
「すまない、つい本能が勝ってしまった」
俺は指をゆっくりと引いた。
「そしたら、ヴァント紐外してくれるな?」
紐外してとユクは願っていた。
「いいや、まだだ。前のガラスが曇ってきたな」
俺はガラスの様子見ていた。
「やっと曇った。恥ずかしかった」
ユクは安堵の表情をしていた。
俺の人間にいたずらをしてみた結果
「ネビス、こちらを向いて」
俺は片手でネビスの顔を向けた。
「何だいきなり」
驚いた表情をしていた。
「俺のお腹見ない?」
服の裾をチラッとめくり素肌を見せた。
「なっ!?ミジェ何をしているんだ」
ネビスは耳を赤くして視線を腹から逸らした。
「ネビス目を逸らさないで」
俺は両手でこちらを向かせた。
「変に誘惑をしやがって、ばか…」
照れながら文句をぶつぶつ言っていた。
「ねぇ、ネビス耳貸して」
俺は優しく言った。
「また変なことをするなら貸さない」
ネビスは警戒していた。
「変なことしない、大丈夫」
俺は強く頷いた。
「わかった、しょうがない」
ネビスは耳を俺の方に向けてくれた。
「ありがとう、ネビス」
俺はネビスの耳を両手で包み込んだ。
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